IT業界で最も人が多い職種といえば「SIer」です。
IPA が出している IT人材白書2017 の「中途採用者職種」を見ても、「SIer・ITベンダー」が 43.2% と割合が一番多くなっています。
引用:IT人材白書2017
そんな SIer業界も、特にここ数年は社員の給与が低い・あがりにくい状況が続いています。
SIer業界を始め IT業界に15年携わっている筆者が、その現状・理由をお話しします。
SIer への転職、あるいは現在SIerにいて別会社・職種へ転職を考えている方の参考になれば幸いです。
SIerとは
まず最初に、このページで記載するSIerの定義・範囲について説明します。
SIerとは、以下をビジネスとして実施している会社・組織を指します。
- 顧客から依頼を受けて行うビジネス(請負型)
- 売上額の決定最大要因は人月見積り
- 契約に期間があるプロジェクト型
自社でソフトウェアやサービスを開発して売っている会社は含まれません。
基本的に顧客の依頼を受けて人を中心としたプロジェクトチーム(一人の場合もあり)を発足し、売上をあげていくビジネスをしている会社・組織を SIer とします。
給与はもちろん会社ごとに異なりピンキリ
給与については、IT業界やSIerに限った話ではありませんが、もちろんピンキリです。
大手 SIer は業界内で高い傾向にありますし、同じ会社内でも部長職以上になると高くなる傾向にあります。
ただし、昔から SIer は下請け・二次請け・三次請けが多く小さい会社も数多くあります。
ここでは、若年層(20〜30代)と中間管理職以下を対象に「給与はやっぱり低いよね」「成果を出しても給与あがらないよね」という理由を説明していきます。
会社の売上があがりにくい

そもそも会社の売上が向上しなければ、社員の給与はあがりません。
会社として入ってくるお金が少なければ、社員がいくら望んでも、経営者があげたいと思っても、ない袖は振れません。
1つの顧客が金額の全てを握っている
SIerは請負型のビジネスです。基本的に顧客から「○○○千円の予算で△△△のシステム作ってほしい」という依頼を受けることが前提です。
ということは、顧客からもらえる金額は既に決まっているということです。
非常に高い技術スキルで使い勝手の良いシステムや高品質システムを作り上げて、「良いシステムを作ったのでお金2倍ください」と言っても通じません。
それは、顧客が金額を決めるからであり、その作ったシステムは一つの顧客からしか売上が発生しない完全請負型ビジネスであるためです。
会社の利益があがりにくい
「売上向上が難しいのであれば、コストを下げて利益を出せば給与は上がるよね」という考えがあります。理論的にはその通りです。
ただし、SIerは請負型というビジネスの構造上、利益を向上することが難しい以下の課題・問題点があります。
- 人月見積り商売であり、人数と時間でコストが決まる
- コストの8〜9割が人件費(給与)である
コストの大半が人件費という状況
コストの大半が人件費(給与)であるため、人件費以外のコストを下げても利益向上への影響が少ないです。
となると、SIerでは「コスト削減 ≒ 給与削減」をしなければいけないことになります。これでは給与はあがりませんよね。
利益向上には人員増が必要
またビジネス形態が人月商売(人数と労働時間で売上が決まる)ため、売上・利益を向上しようとすると人の数を増やさなければいけないことになります。
どのような会社であれ、ビジネスは人で成り立っていることは明確ですが、SIerのようにここまで人数と時間に依存したビジネスとなると、短期・中期的に売上・利益をあげるには人を増やすしかありません。
この人材難の時代に、人を増やして教育するというのは非常に難しいです。さらに給与が高いわけではないのでそれほど人が集まらないという負のスパイラルに陥ります。
人が増えても一人当たりの利益額があがらない
このように人月依存のビジネスをすると、人を増やすことができて売上・利益額を増やせたとしても、一人当たりの利益額を増やすことは難しいです。
一人当たりの利益額を増やすことができなければ、一人当たりの給与をあげることも難しくなります。
これがSIer業界・職種で成果を出しても・顧客から褒められても給与があがりにくい大きな要因です。ビジネス構造上そうなってしまうのです。
給与を上げたければSIer以外の会社・職種も検討しよう

大手SIer会社も基本的にSIerビジネスは同じ構造です。
ただし、大手の場合はSIer以外に自前のソフトウェアやサービスもビジネスとして手がけていることが多く、現状その分野に力を入れて売上・利益を伸ばしている・伸ばしたいと考えて事業を広げています。
SIerのみに依存して脱却できない中堅以下の企業は、今後の人材不足状況では生き残りは難しいと考えて良いでしょう。
ソフトウェアメーカーやサービス提供会社を検討する
自前でソフトウェアを作っている会社であれば、数多く売れてもソフトウェアをコピーして配布すれば良いので、売れれば売れるほど一人当たりの利益額は向上します。
また、サービス提供会社もサービスを構築しているシステムが存在すれば顧客ごとに人やシステムをガンガン増やすわけではないので、顧客数が増えれば一人当たりの利益額は向上します。
ゲームを開発しているゲーム会社もソフトウェアメーカーの部類に入るので、ゲームが売れて普及すればするほど売上・利益が爆発的に向上し、社員の給与もあげることが可能になります。
給与を上げたければ、SIerではなくこのような会社も視野に入れてスキルアップや転職活動をしましょう。
すぐに転職をしなくても、情報収集や自分の転職市場での価値を知るために転職サイトやエージェントに登録しておくことをおすすめします。
できればIT業界・職種に強い転職エージェントに登録して、相談や今の自分にどのような会社を志望できるのか確認しましょう。
採用側としても10社近くの転職エージェントと関わった経験から、以下をおすすめします。
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マイナビエージェント|あなたに合ったキャリアプランを提案:IT職種に強い最大手のマイナビエージェントであれば、求人数と実績も多く安心です。
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ワークポート|あなたに寄り添う転職サービス:IT業界に強く、コンサルタントを超えた転職コンシェルジュの支援を受けることができます。
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レバテックキャリア:ITエンジニア支援に特化しており、専門用語での相談や最新技術の動向に強い会社の紹介につながります。
また、転職エージェントには相性の良し悪しがあり、担当者によって対応が異なるということが現実的に存在します。
そのため複数の転職エージェントを登録して、自分に一番合うエージェント会社や担当者と相談や話を進めることをおすすめします。
まとめ:SIer業界への転職は慎重に
SIer業界は人材不足と人月依存のビジネス構造という状況から、一人当たりの売上・利益向上が難しい業界です。
そのため、必然的にそこで働く社員の給与を上げることも難しくなります。本ページでご紹介した内容をまとめます。
- 予算は顧客が握っており売上向上が難しい
- 1顧客ごとの人月契約請負型ビジネスで転用が難しい
- コストがほぼ人件費で削減も向上も難しい
- 人材難で人数に依存するビジネス構造
ただし、SIerの全てが良くないとは思いません。
未経験や経験が少ない状況では、まずSIer会社に入り経験を積んだり、様々なシステムに携わり俯瞰的なスキル・視野を身に付けることができれば、それは今後どのIT系会社でも役立ちます。
ただし、ビジネス構造と社会状況から今後給与が伸びていく要素が薄い業界であるため、給与を上げたければ長く携わることはおすすめできません。
自分のキャリアや向き不向きも考えて、SIerへの転職あるいはSIerからの転職を考えていきましょう!
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ワークポート|あなたに寄り添う転職サービス:IT業界に強く、コンサルタントを超えた転職コンシェルジュの支援を受けることができます。
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レバテックキャリア:ITエンジニア支援に特化しており、専門用語での相談や最新技術の動向に強い会社の紹介につながります。