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日本の「引継ぎを完璧にする」という無理で無駄な文化

「異動をする」「転職をする」となったときに、必ず会社や上司から言われる言葉があります。完璧に引継ぎをお願いね。」と。

もちろん、どんな仕事でも引継ぎがビシッとできるに越したことはありませんが、そもそも、人が考えていること/実施していることを他人が完璧に同じように考えて実施するなんて無理なんです。そんなことに時間と労力をかけることは無駄なのです。

この記事では、日本の悪しき風習「引継ぎ文化」を解説し、引継ぎ風習が強い会社のリスクや対処方法を洗い出していきます。

引継ぎがあるから異動がスムーズにできないという悪しき風習

引継ぎが必要という風習が社員のキャリアアップを妨げている

人がキャリアアップする上で、新しいチャレンジは必要です。毎日同じことをしていても飽きてきますし、スキルアップにつながりません。新たにチャレンジするには、社員の適正やステップアップに応じた職場・プロジェクト異動はどんどん実施すべきです。

しかし、異動話が出た途端に「引継ぎが完璧にできないと」「他に引き継げる人がいないから、すぐには無理だよ」という声が現場から上がります。これにより、異動が半年から数年延びてしまうことが平気で行われています。

引継ぎ文化が社員の流動性やスキルアップ、ビジネス拡大の機会を妨げている

「引継ぎが完璧にできないと」という風習が強まると、社内の異動が活発に行われなくなります。そうすると、当然社員の新たなスキル習得の機会が失われますので、スキルアップは妨げられます。

また、新たなビジネスや事業を始めるときに「あの人がこの事業を担当するのに最適だよな」ということがわかっていても、引継ぎで今の現場をすぐに離れることができないからそのプロジェクトにアサインできず、結局プロジェクトも上手くいかないという結果になります。

そもそも人の経験や知識を完璧に引き継ぐというのは無理

引き継ぎでは主に「タスクの洗い出し」「業務フロー確立」が求められます。わたしもこれまでプロジェクト異動や退職の際に、引き継ぐ側として非常に強く言われてきました。

タスクの洗い出しでは漏れがないようにと要求されますが、数年以上実施してきた業務のタスクを漏れなく洗い出すのは不可能です。

また業務フローも様々な例外ケースがありますので、これもあらゆるケースを抽出するというのは不可能です。例外対応というのは幾つかの状況や要素を考慮して判断していますので、一概に言えるわけがありません。

無理なことに時間をかけるという愚の骨頂

上記で説明したように、完璧に引き継ぎを実施することは無理です。その無理なことに会社の大事なリソースである人の工数を大量に費やすということは、無駄の何ものでもありません。

「引継ぎ」が必要となる会社・組織には問題がある

そもそも「引継ぎ量が膨大にある」状況は、会社・組織として健全な状態とは言えません。様々なリスクがその会社に存在しています。

業務停止リスク

一人の人間に業務をさせるということは良くあることかもしれません。しかし、その人が急にいなくなったときにその会社の業務が完全に停止するような体制は良くありません。

会社側がきちんと重要な業務を把握し、トラブルが起きてもその業務が継続できるような体制や仕組化をしていないことは非常に大きな問題です。

社員が育たない

大量の引継ぎを発生するということは、一人の人間に同じ業務をずっとさせているということです。もちろん仕事内容や本人の工夫度によりますが、同じ仕事を何年も続けていても成長は頭打ちになり、スキルアップにつながらなくなります。

システム化/効率化につながらず社員は疲弊していく

人の異動で引継ぎが多く発生するということは、組織としては「業務のシステム化/効率化」に取り組んでいないことにもつながります。何かあっても人で全て解決しようとする風潮が強いためです。

これでは、人の手で業務を進める人海戦術による業務が多いことを示しており、これでは社員が疲弊し本来のビジネスを進める推進力がなくなります。

日々消耗/疲弊していませんか? それは「一番大事なのは人である」という会社の方針からかもしれません あなたは会社の仕事に消耗していませんか? 色んな仕事を任されて疲れていませんか? もしかしたらそれは、会社や組織の「一番大事なのは人...

「引継ぎ」で 異動時期が延びないように準備をしておく

ここまで、「引継ぎ」の無理・無駄な理由や、そもそも「引継ぎ」を当たり前のように発生する会社の危険性を説明しました。とはいえ、最低限「引継ぎ」が必要なケースはありますし、ある程度「引継ぎ」を想定して業務に取り組まなければ、あなた自身が異動しづらい状況となってしまいます

そのような状況にならないよう、「引継ぎ」を円滑に進めるための日々実施すべき準備をご紹介します。

業務リストを作っておく

自分の日々行っている業務/課せられている業務をリスト化しておきます。メモ帳やエクセルなどに洗い出すだけでも OK です。これは、「引継ぎ」だけではなく自身の To Do の確認や業務の振り返りにも利用できるのでオススメです。

作成したドキュメントやメールのやり取りは常に共有しておく

自分だけで情報やノウハウを抱え込んでしまうと、引継ぎの際に伝達する情報が多く労力もかかる大変な状況となります。

普段から顧客や関係者とのやりとりは、メールのCCに上司や先輩を含めるなどして情報を共有しておきましょう。また、顧客情報や作成したドキュメント・成果物なども自分のパソコンのみに保存するのではなく、組織のファイルサーバーやクラウドストレージに保存して共有しておき、必要なときは関係者が閲覧できるようにしておきましょう。

ひどい場合は転職も考えるべし

これまでご紹介したように、引継ぎが多く発生する効率の悪い会社はあなたの成長につながりません。

業務の遂行が一人の人間に強く依存し、情報やノウハウ共有も実施していない組織・会社に所属している場合は、転職を考えても良いレベルです。自身の成長につながる環境へ移りましょう!